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小さな映画館に寄せて

映画館で映画を見よう! 森田惠子 2011.03.21 (Mon)

原稿を書くチャンスを頂いて書いた原稿をアップします!

 2008年9月、私は90周年を迎える映画館があると聞いて北海道浦河町にある「大黒座」を訪ねました。浦河町は、北海道の南岸、太平洋に面した漁業と競走馬を主な産業とした人口1万4千余りの小さな町。

 昨年、人口40万の藤沢市から映画館がなくなりました。商売として成り立たなかったからでしょう。そういう時代に今年で93年目を迎える映画館が、しかもこんな小さな町にあることは奇跡です。お話を伺った町民の何人もの方からも「奇跡だ!」という言葉が聞かれました。恐らく、「大黒座」は、日本で一番長く続いている小さな町の小さな映画館(48席)だと思います。

 町にまだ公民館など公共の場のなかった時代の映画館は、芝居も、講談も、選挙演説の会場にもなりました。町の文化の発信基地であり、娯楽の場であり、人と人との出会いの場でした。皆で映画を見る楽しさを知っている人にとって、映画館は特別な思いのあるところです。でも、この頃の若者たちは映画は好きでも自宅で見る人が多いそうです。

 自分が笑った同じところで笑う人がいる。予想外のところで隣の人が泣いている。そういう経験が自分自身へと目を向かせます。そして、映画館から出ると、いつもの時間がいつものように流れている。こんな不思議で深い経験はほかにはないと思います。
 経験のある人たちには、そのことを思い出してほしい。経験のない人には経験してほしい。特に若い人たちに。さまざまな人生が、そして、一つの価値観に縛られることなく生きることの意味を深く広く考えるチャンスが、映画館には詰まっています。

 記録映画『小さな町の小さな映画館』では、桟敷席で火鉢を抱えて映画を見た時代から、朝から深夜まで映写機が回り続けた時代、テレビやビデオの普及で暖房費の掛かる冬場は土日だけ営業して凌いだ時代など、映画館の歴史を見ることができます。そして、その時、その時の館主の思いも知ることができます。

 4代目館主の三上雅弘さんは「地方の、こういう辺境のところから、観客が育っていけば絶対にいいはず」と語ります。父親を手伝い始めた頃から今も、雅弘さんは子供たちに割引券を配っています。雅弘さんの妻佳寿子さんは、割引券を貰って小さな時から浦河を離れるまで「大黒座」で映画を見て育ちました。佳寿子さんは「これから浦河に生まれてくる子供たちのためにも、大黒座がなくなってはもったいない」と語ります。
 そして、もう一つ印象的なのは浦河町民の応援です。1986年に生まれた「浦河映画サークル」は会報を発行し、「浦河映画祭」を主催し、自主製作映画を何本も作っています。1994年に建て直された「大黒座」(3館目)を応援しようと、「大黒座まつり」を主催する人たちが現れ、「大黒座サポータズクラブ」が発足しました。誰もが願っているのは「大黒座」の灯が点り続けてほしいということ。

映画館で映画を見よう!

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