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小さな映画館に寄せて

灯よ、点り続けて! 森田惠子 2011.07.26 (Tue)

「女性情報」5月号に、原稿を書くチャンスをいただきました。読者は女性が多いだろうと考え、印象に残ったお二人の女性のことを書きました。許可を頂いて転載します。

 ドキュメンタリー映画『小さな町の小さな映画館』は、人口1万4千余りの北海道の小さな町「浦河町」で、90年以上も続いている小さな映画館「大黒座」を中心に、町から映画館の灯を消すまいと手をつなぐ町民たちを記録した作品です。

 最初に、私が「大黒座」を訪問したのは2008年9月。90周年を迎えるのを機会に撮影を始めました。「大黒座」のある「浦河町」には、別の作品でご縁があって「大黒座」の名前は知っていたものの、その映画館が90年以上も続いている映画館とは、その時まで知りませんでした。

 90周年を迎えた「大黒座」には、特別な飾りも、気負いもなく、朝の回はお客さんの気配もありませんでした。お客さんの来ないことはよくあることなのか、「コーヒーを入れますから飲んでいってください」と、3代目館主の妻・三上雪子さんが声を掛けてくださった。

 90周年の日に上映されていたのは『潜水服は蝶の夢を見る』。この作品、私には思い入れのある作品だけれど、人がたくさん入る映画とは思えませんでした。俄然、館主の三上雅弘さんがどのようにして上映作品を選んでいるのか、気になってきました。

 「大黒座」の前に看板が立っていて、その看板を描いているのが女性の看板屋さんで、しかも以前活発に活動していた「浦河映画サークル」の機関紙作りを一手に引き受けていた方だと伺って、早速、会いに出かけることにしました。

 最近は看板の仕事が減ってきてしまい、週の前半は喫茶店を「café アッシュ」を営みながら、好きな看板の仕事を続けておられます。
 「café アッシュ」は、自宅に居るような暖かい雰囲気で一つ一つ整えてきた感じのするお店でした。店主の馬道浩美さんは、「機関紙の原稿、手書きで書いていましたよ。書くのが好きだからやりたいほうだったの」と、押入れの奥から機関紙のファイルを取り出してきてくださって、当時主催した「浦河映画祭」の盛り上がりや恩地日出夫監督が「大黒座」を舞台に撮影した「結婚」の撮影に協力した話などをたくさんしてくださいました。

 「浦河映画サークル」の初代会長の以西明美さんとは大の仲良し。「連絡付きますよ~」と、連絡を取ってくださった。

 「浦河映画サークル」の初代会長を務めた以西明美さんは、当時は保健所の栄養士として地域の皆さんの健康に関わる仕事をされていました。20代だった以西さんが「いろいろな人と映画の話をしたい」と、3代目館主の三上政義さんに話したところ、ある日、喫茶店に呼び出されたそうで、行ってみると、そこには映画好きの若者が数人集まっていて、初対面なのにそのまま「何かやりましょう!」と活動が始まったそうです。

 その後、保健所の仕事が変化していって地域の皆さんと直接触れ合うチャンスが減ってきて、子供の頃からの夢・パン屋さんになることを決意! 今は「ぱんぱかぱん」というパン屋さんを営み、材料に拘り、安心安全で美味しいパン作りと販売の日々を過しておられます。

 このように次々と紹介して頂いて、芋づる式にインタビューした浦河町の皆さんは総勢32人。そして、その撮影は2010年11月まで続きました。

 今、思うと、突然、カメラを持って尋ねて行ったにも関わらず、浦河の皆さんが、まるで隣のおばさんがお茶を飲みに来た時のように、一夜干しのイカが出てきたり、ご主人の話に奥さんの突っ込みが入ったり、楽しい撮影でした。
 カメラを向けたら緊張してよそ行きの顔になる人が皆無だったのです。その背景には厳しい地方での暮らしの中で、自分の価値観を持ち、一日一日を大切に暮らしてきたという土台があったからではないかと感じています。
 カメラがひょっこりやってきても、なんでもなかった! そのことと、町にずっと映画館があったことは、きっと繋がっている! そういう気がしてならない私です。「大黒座」の灯よ、点り続けて!

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